改札を出ると雨が降っていた。

今日は降るって言ってたっけか？と見回すと、駅舎の屋根の下に
恐らく同じように思ってるだろう人達がたくさん立ち往生している。
幸いにも鞄の中に折り畳みを入れていたので、パシャパシャと歩き
始めた。

いつもの帰り道を行くと、前方に幼稚園くらいの女の子がお母さんと
一緒に歩いている。
１つの傘に２人で収まって手をつないでいるのだが、女の子は頭に
タオルをターバンのように巻いていている。
たぶんお母さんに巻いてもらったのだろう、確かにいい雨よけに
なっている。

何か色々とおしゃべりしている女の子と、その手を引いてズンズン
歩くお母さん。
しばらく行くと、お母さんが空を見上げたなと思ったら、差していた
傘を閉じた。
通り雨だったのか、いつの間にか止んでいて生暖かい風だけが
吹いている。
それを見てこちらも気がつき傘を閉じた。
歩きながら傘の雫をバラバラと払うと、ターバンの女の子がこちらを
振り返り、またすぐに前を向いた。

短い通り雨だったが、道のあちこちに水たまりが出来ている。
女の子はサンダルを履いた足で、その１つにジャバジャバと入った。
なにやってるのもうっ！
すかさずお母さんが怒って手を引っ張る。

なんで子供は水たまりを見ると入りたがるんだろう…まぁ、自分も
そうだったなと思い出していると、また女の子がこちらを振り返った。

そしてまた、ズンズン歩くお母さんに手を引かれてスキップ気味に
歩いて行く。
タオルのターバンで頭を濡らさずにすんだのに、わざわざ足を濡らし
ちゃったなと、なんか可笑しくなる。

マンションの前に来て、母娘は明るい玄関の中に入って行く。
するとまた女の子がこちらを振り返った。
そっと手を振ってみると、ニコッと笑って消えて行った。

帰ったらまず足を洗われるんだろうなと思って、なんかまた可笑しく
なった。