夜ひとり
2010. 3.27
夜、ひとり
寝静まった宿の窓から星を見る
今日来た道にはかんむり座
明日行く道にはオリオン座
また朝になれば旅に立つ
今はほんのひと息つくだけの
わずかな時間を抱きしめている
夜、ひとり
寝静まった宿で手紙を読み返す
折り目の破れた古い紙
過去と今とを結ぶもの
終わりの見えない旅だから
今は失いかけたやさしさの
わずかなかけらを抱きしめている
夜、ひとり
寝静まった宿のベッドに横たわる
疲れているのに眠れない
寝返りばかり繰り返す
ふるさとの夢はもう見ない
明日はもうこの町を去ることが
私に残された 道なのだから
ただひとり
寝静まった宿を静かに抜け出して
夜明けの前に町を出る
振り返らずに立ち去ろう
誰の記憶にも残らない
静かに消え去るだけの追われる身だから
今日もまた旅を続ける